WTOでの日韓の議論平行線 今後どうなるのか

WTO 日韓 平行線 今後 WTO本部の画像 日韓関係 朝鮮半島情勢
出典元: 一般理事会が始まったWTO本部。日本の輸出管理厳格化について、日韓がそれぞれの立場を主張する=23日、ジュネーブ(三井美奈撮影) (C) 産経新聞
 WTOで日韓が相も変わらず平行線。今後の関係改善はあり得るのか
24日、スイス・ジュネーブで開かれたWTOの一般理事会で、日本政府による韓国への半導体材料などの輸出規制強化を巡って、日韓の応酬が繰り広げられました。
また、日本政府により、韓国を”ホワイト国”から除外するとの動きもあり、これにより輸出規制がさらに強化されるとのことから、韓国は日本の措置が不当だとして撤回を求めましたが、加盟国も静観の構えで、従来通りの平行線で終わるに留まりました。
韓国はWTOに日本を提訴する準備を進めるとの意向を示しています。
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WTOでの日韓問題が平行線続き。今後どうなっていくのか?

(※記事は現時点での情報であり、最新のものとは異なる場合があります。また、人物については、敬称略にて記載させていただいております。何卒ご了承願います)

韓国への輸出規制強化を巡り、日韓が平行線続き。

24日、スイス・ジュネーブのWTO(世界貿易機関)の一般理事会で、日本政府による韓国への半導体材料などの輸出規制強化を巡る、日韓両政府による応酬が繰り広げられたようです。

日本は今月4日に、フッ化水素など、半導体材料3品目の韓国への輸出について規制を強化しました。

また、日本政府は、輸出先として信頼できると認定している『ホワイト国』(安全保障上の輸出管理で、貿易規制上において優遇措置を取っている)から韓国を除外する政令改正を8月2日にも閣議決定する方向で調整していることが26日に判明しています。

政令公布の21日後に施行される8月下旬にも除外される見通しであるとされていることから、現在はこの3品目のみが規制されていますが、今後は幅広い品目が規制対象になり得るとされています。

これに対し、韓国政府は強く反発し、日本の措置が不当だとしてWTOで撤回を求め、加盟国にも理解を求めましたが、複数の国々が、複雑な歴史が絡む2国間の対立には巻き込まれたくはないと述べるに留めるなど、静観の構えで距離を置くのみだったようです。

WTO提訴の準備を進める韓国。日韓が平行線辿るのは、今後も継続か?

日韓、それぞれの主張。

理事会後の、韓国の金勝鎬(キム・スンホ)新通商秩序戦略室長の主張。

元徴用工訴訟問題などに対する『経済報復措置だとして非難

「日本の輸出規制は貿易措置でも安全保障上の措置でもなく、外交上の対立で有利な立場を得るための戦略だ。つまり、元徴用工問題」と強調。
出典元: WTOで日本・韓国が論戦 「日韓対立に巻き込まれたくない」との参加国も (C) REUTERS

WTO体制に脅威を与える措置韓国は半導体分野の主要製造国であり、世界の供給網に影響する
出典元: 韓国、WTO工作失敗! 官邸関係者「まったく愚かだ」 日本の輸出管理強化を批判も、他国はまるで無反応 (C) zakzak

伊原純一・駐ジュネーブ国際機関政府代表部大使の主張。

“ホワイト国”の指定取り消しは韓国が初となりますが、このことについて経産省が実施していたパブリックコメント(意見公募)の締切日でもあった24日は、数万件もの意見が寄せられたとされ、「圧倒的に賛成意見が多い」(政府高官)といいます。

「日本は多くの国と同様、定期的に輸出管理を見直している。(今回の輸出管理強化は)輸出管理制度に基づく措置で、安全保障の観点から(大量破壊兵器の)関連物資・技術の拡散を防ぐことを目的としている。WTOの場で取り上げるのは適切ではない
出典元: 韓国、WTO工作失敗! 官邸関係者「まったく愚かだ」 日本の輸出管理強化を批判も、他国はまるで無反応 (C) zakzak

韓国が制度改善に取り組むという信頼に基づき2004年にホワイト国に指定したが、過去3年間は日本側が要求したにもかかわらず制度改善について全く協議が設けられなかったと説明。「さらに、韓国向け輸出で不適切な事案があった」とした。
出典元: WTOで日本・韓国が論戦 「日韓対立に巻き込まれたくない」との参加国も (C) REUTERS

韓国産業通商資源省は24日、WTOの一般理事会で日本側に2国間協議を提案したが、応じなかったとし「強い失望感を表明した」と非難した。「WTOの事実上の最高意思決定機構で日本側の措置の問題点を広く伝えると同時に、日本側の非協力的な態度も浮き彫りにした意義がある」と強調。今後も国際社会に日本の措置の問題点を提起していく構えを明らかにした。
出典元: 韓国の狙い空振り…WTO理事会「日本非難」に同調勢力なく (C) 産経ニュース

WTO 日韓 平行線 今後 WTO本部の画像

出典元: 一般理事会が始まったWTO本部。日本の輸出管理厳格化について、日韓がそれぞれの立場を主張する=23日、ジュネーブ(三井美奈撮影) (C) 産経新聞

WTOでの日韓、平行線変わらず。今後の動きに注目。

輸出規制強化の引き金と思われる日韓問題の1つ、徴用工訴訟問題について。

第二次世界大戦中、日本の統治下にあった朝鮮と中国での日本企業の募集や徴用によって労働した元労働者・その遺族による訴訟問題のことで、元労働者は奴隷のように扱われたとして、現地の複数の日本企業を相手に多くの人が訴訟を起こしています。

韓国では、三菱重工業、不二越、IHIなど、およそ70社を超えるといいます。

(2018年10月30日、韓国の大法院(最高裁)は、新日本製鉄(現日本製鉄)に対して、韓国人4人へ1人あたり1億ウォン(約1000万円)の損害賠償を命じたそうです)

当時の日韓請求権協定では「解決済み」。

日本の徴用工への補償について。

韓国政府は1965年『日韓請求権協定』では解決済みとしてきたようですが、大法院は”この協定によって個人の請求権は消滅していない“としました。

日本政府は強く反発し、「法的基盤を根本から覆すもの」だとし、安倍晋三首相は「今般の判決は国際法に照らしてあり得ない判断だ。日本政府としては毅然と対応する」と強調して非難しました。

徴用は、戦時下の労働力不足に対処するため、1939年に制定された「国民徴用令」に基づき、日本国民すべてを対象とした義務だった。当時、日本国民だった朝鮮人に適用されたのは国際法に照らしても、問題はない。給与も法律で決められており、留守家族には収入減の補償まであった
さらに、日韓の請求権問題については、65年の日韓請求権・経済協力協定で「完全かつ最終的に解決」と確認されている。徴用工訴訟の判決自体が異常なのだ。
出典元: 韓国、WTO工作失敗! 官邸関係者「まったく愚かだ」 日本の輸出管理強化を批判も、他国はまるで無反応 (C) zakzak

WTOでも日韓は平行線。今後どうなっていくのか?

今後の日韓関係について。

日本政府が否定しても、輸出規制は元徴用工問題を巡る事実上の対抗措置とみられており、貿易の政治利用だとして韓国の反発を招きました。

25日、韓国の李洛淵首相は会議にて、日本に対して外交協議を呼びかけると同時に、輸出規制強化は「日本にも世界にも利益とならず、むしろ予測できない結果をもたらす」と改めて撤回を求めたとされています。

民間レベルで広がる反日。

韓国内では日本製品の不買運動が広がり、観光にも支障が出始めているようです。

関連記事:日韓対立、日本経済への悪影響出始める

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また、『ホワイト国』からの除外措置が施行されれば、韓国の主要産業の1つである自動車など、他にも広範囲に影響が出ることになるとのことで、韓国政府は強く反発、日本をWTOに提訴する準備を進めています。

提訴した場合、『再終審』にあたる上級委員会の判断が出るまでには3~4年かかるとのことで、対日関係の悪化が続けば、韓国経済も深刻なダメージを受け、企業にも悪影響が広がると懸念されています。

日韓の亀裂はどこまで続く?韓国はなぜここまで反日強硬路線に…元駐韓大使の武藤正敏と徹底議論|AbemaPrime 7/16放送 平日よる9時~【アベマTV】

『日韓請求権協定』には、両国に紛争が起きた際は協議による解決を図り、解決しない場合は”仲裁”という手続きが定められているようです。

日本政府はこの手続きですら解決しなかった場合には、国際司法裁判所への提訴も視野に入れているようです。

韓国の問題への素早い対処、自国生産で巻き返し始まる?

今月4日、日本政府による韓国への、フッ化水素など3種類の半導体材料の輸出規制強化が始まりました。

このことを受けて、韓国国内での増産の動きが始まったそうです。

23日、ソウルブレインのフッ化水素工場が9月に操業を開始し、日本製品に代替できることを期待している、との同社関係者の話が、韓国のオンライン経済ニュース・マネートゥデーにより伝えられました。

韓国の半導体大手、サムスン電子、SKハイニックス、両社はこれらの材料を主に日本から調達していましたが、フッ化水素については、中国企業や韓国企業からも調達しているのだそうですが、ソウルブレインの資料によると、同社はすでにこの2社に一定量のフッ化水素を供給し始めているようです。

 23日、韓国株式市場で、ソルブレイン、一時26.5%急伸、6.5%高で終了。

WTO自体も機能不全?日韓も平行線を辿り、今後どうなっていくのか?

そもそも、WTOは機能不全との情報が取り沙汰されている。

日韓問題よりも、WTOの紛争解決制度の機能不全の改革が喫緊の課題だとされています。

WTOは自由貿易を推進する目的で設立されましたが、米中摩擦の原因となった”知的財産権の侵害“や産業補助金などの中国による不公正な貿易や、米国の”制裁関税“といった保護主義的な動きに対応しきれておらず、有効策を打ち出せない状態だといいます。

しかもWTOは全会一致が原則のため、改革を具体的に進めるには、米中を含めた各国の連携が不可欠とのことで、前途多難な雲行き。
それなのに、紛争案件は増加の一途を辿っているとされています。

多すぎる紛争、そして提訴。

アメリカ政府が輸入関税を導入したことで、今年に入り、中国、カナダ、EUが、米国を相次いで提訴しました。

トランプ大統領も、WTOの枠組みを批判しているものの、報復関税を打ち出した国・地域を提訴しました。

そして、今後は韓国が、WTOに日本を提訴する準備を進めていくとしています。

大国には交渉カードがいくつもある。

なんにしても、機能不全のWTOに頼らずとも、大国には別ルート…例えば、輸入税外国投資規制ビザ発給制限などで影響力を行使する手段があるとされていますので、各国の出方が今後注目されるところでしょうが、WTOに限っては機能不全のままですので、事態を打開できるめどは全く立っていないとされているようです。

 WTO、日韓が平行線を辿り、議長を含む加盟国は、今後も二国間解決を望むとし、静観
24日に開かれた、スイス・ジュネーブでのWTOの一般理事会。
そこで日本政府による韓国への半導体材料などの輸出規制強化を巡り、日韓の応酬が繰り広げられましたが、従来通り、平行線で終わりました。
今月4日、フッ化水素などの半導体材料3品目が輸出規制強化対象となり、8月2日には韓国を”ホワイト国”から除外するとの日本政府の動きに、韓国が強く反発
輸出先として信頼できるとするホワイト国から除外されれば、さらに輸出規制が強化される品目が増えるとされ、これにより韓国企業に多大なる影響が広がると懸念されています。
韓国は日本のこの措置を不当だとしてWTOで撤回を求め、加盟国にも理解を求めましたが、各国は、複雑な歴史が絡む2国間の対立には巻き込まれたくないとして、静観するに留まりました。
韓国はWTOに日本を提訴する準備を進めているようです。